個人再生とは?費用や流れを紹介!自己破産との違いも詳しく解説

個人再生とは借金額を大幅に減らすことができる債務整理の方法です。自己破産とよく似ていますが、それぞれメリットやデメリットが異なるため、自分に合った方を選ばないとデメリットの方が大きくなってしまいます。

事前に個人再生への理解を深めておくことで、いざというときにスムーズに借金問題を解決できます。

今回は個人再生の特徴やデメリットを解説します。費用や体験談も紹介するので、大きな額の借金で悩んでいる方は必見です。

目次

個人再生とは?イラストでわかりやすく解説!

引用元:司法書士法人みつ葉グループより

個人再生とは、弁護士や司法書士が裁判所に申し立てを行うことで借金を減額してもらう制度です。

借金は5分の1程度まで減らすことができ、個人再生後は事前に提出した再生計画案に沿って返済を進めていきます。

裁判所が認可するので、借入先は借金の減額を受け入れるほか、取り立てなどの直接の連絡もストップしなければいけません。

個人再生は、依頼人の職業や収入によって次の2種類の申請が可能です。

小規模個人再生 給与所得者等再生
主な対象 個人商店主、小規模事業者 サラリーマン
利用条件 ・継続または反復して収入の見込みがある
・借金総額が5000万円以下である
定期的な収入があり、変動の幅が少ない
最低返済額※1 100万円未満:総額全部 小規模個人再生と同様に算出した額と2年分の可処分所得額(※2)を比較して多い方の額
100~500万円以下:100万円
500~1500万円以下:総額の5分の1
1500~3000万円以下:300万円
3000~5000万円以下:総額の10分の1
債権者の同意の必要性 あり なし
  • 1.財産状況などによって変わる場合あり
  • 2.自分の収入の合計額から税金や最低生活費などを差し引いた金額

家や車はどうなる?個人再生と自己破産の違い

自己破産も個人再生と同じく裁判所を通して借金の負担を減らす制度です。個人再生と自己破産の違いは、以下のようになっています。

スクロールできます
個人再生 自己破産
借金減額の程度 約5分の1 全額免除
住宅処分の有無 △住宅ローン特則を利用すれば処分しなくてよい
自動車処分の有無 △ローンを完済していれば残せる △時価20万円以上でなければ残せる
資格制限 なし あり
免責不許可事由 なし あり
解決までの期間 7~8ヶ月 6ヶ月~1年
費用 40~60万円 20~70万円

個人再生と自己破産の大きな違いは、借金をどこまで減らせるかという点です。自己破産は全額免除になりますが、個人再生は5分の1までの減額なので個人再生後も支払いを続けなければいけません。

しかし、自己破産に比べて住宅や自動車の処分の条件が易しいので、財産を一部保有しておくことが可能です。また、個人再生は自己破産のように資格制限や一時的な職業制限がないので、申し立てしやすいのも特徴です。

解決にかかる期間や費用も少ないため、減額できれば返済可能な借金額なら個人再生を選ぶことをおすすめします。

大幅に借金を減らせる!個人再生のメリット

個人再生は一部生活に影響があるものの、多額の借金を大幅に減額できるなどメリットも多い債務整理方法です。

個人再生のメリットを理解することで自分に必要かどうかわかるので、今の状況に合った方法で借金問題を解決できます。

個人再生の4つのメリット
  • 借金の大幅な減額ができる
  • 住宅ローン特則を使えば家を処分しなくてよい
  • 借金の理由に関係なく利用できる
  • 資格や職業に制限がない

借金の大幅な減額ができる

個人再生の大きなメリットとして、借金を5分の1まで減らせることが挙げられます。利息カットによる減額を行う任意整理は半分程度しか減らせませんが、個人再生であれば裁判所を通して多額の借金を減額することができます。

さらに、借金総額が3000〜5000万円未満であれば10分の1まで減らすことができ、月々の支払いを楽にさせられるので借金額が多い方は個人再生を検討しましょう。

住宅ローン特則を使えば家を処分せずにすむ

自己破産は例外なく家を処分されますが、個人再生は住宅ローン特則を利用して家を保有することができます。

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは

第百九十八条 住宅資金貸付債権(民法第四百九十九条の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る。)が当該代位により有するものを除く。)については、再生計画において、住宅資金特別条項を定めることができる。ただし、住宅の上に第五十三条第一項に規定する担保権(第百九十六条第三号に規定する抵当権を除く。)が存するとき、又は住宅以外の不動産にも同号に規定する抵当権が設定されている場合において当該不動産の上に同項に規定する担保権で当該抵当権に後れるものが存するときは、この限りでない。

民事再生法第百九十八条より

住宅ローン特則とは、住宅ローンをこれまで通り支払い続けることで、住宅を処分せずに済む制度です。このとき、住宅ローン以外は個人再生によって減額や分割払いができるので、住宅ローン以外の借金の支払いが厳しい方にとって効果的です。

ただし、以下の条件に当てはまる場合のみ利用できます。

住宅ローン特則を利用できる条件
  • 住宅の購入やリフォームのために借りたお金であること
  • 個人再生を申し立てる本人が所有する住宅であること
  • 住宅ローン以外の抵当権がついていないこと
  • 住宅ローンの滞納がないこと
  • 滞納による代位弁済(保証会社が代わりに支払うこと)から6ヶ月以内であること

借金の理由に関係なく利用できる

借金の理由がどんなものであっても利用できるのが個人再生です。自己破産は免責不許可事由に当たらないことが利用条件で、ギャンブルや投資などによる過度な浪費で借金した場合は認可されません。

しかし、個人再生は借金の理由に関わらず利用できるため、ギャンブルなどで多額の借金を抱えた方も債務整理できるのが大きなメリットです。

資格や職業に制限がない

個人再生は資格取得や就職に影響が出ないというメリットがあります。自己破産は破産手続を開始した時点で、一時的ではありますが弁護士や公認会計士などの一部の資格を失うほか、団体企業の役員や会社取締役などの職業に就けなくなります。

一方、個人再生は手続き開始から解決まで資格や職業の制限はかからずに行うことができます。

保証人への一括請求の通知あり!個人再生のデメリット

自己破産に比べて生活への影響が少ない個人再生ですが、デメリットもいくつかあります。デメリットを知った上で個人再生を行うことで、安心してその後の生活を送ることができます。

個人再生の4つのデメリット
  • クレジットカードが一定期間使えなくなる
  • ローン支払い中の車は処分される
  • 保証人への一括請求通知が送られる
  • 費用や時間がかかる

一定期間クレジットカードやローンに制限がかかる

ほかの債務整理と同様に、クレジットカードが一定期間使えなくなるので注意しましょう。個人再生を行うと信用情報機関(ブラックリスト)に情報が登録されるため、これまで利用していたクレジットカードが使えなくなることに加えて、新規登録もできなくなります。

また、新たな借り入れもできなくなるのでローンの新規契約もできません。

任意整理よりも登録期間が長く、10年程度はこのような状況が続きます。

ローン支払い中の車は処分される

個人再生は、ローン完済済みでない車は処分しなければいけません。車の所有権がローン会社にある場合は、原則引き揚げとなるため処分する必要があります。

個人再生後にローンを組まずに車を購入できるので、新しい車が欲しい方は現金で購入するようにしましょう。

保証人へ一括請求の通知が送られる

個人再生はすべての借入先を対象とするので、連帯保証人付きの借金があった場合は保証人への一括請求通知が送られます。

一括請求通知が送られると、保証人は借金の全額を一括で支払わなければいけません。支払い不能であれば保証人も債務整理を行う必要があり、多大な迷惑がかかります。

保証人付きの借金を含めて個人再生を行うときは、事前に保証人に相談するようにしましょう。

費用や時間がかかる

個人再生は任意整理に比べて費用やお金がかかるのがデメリットの1つです。任意整理と個人再生を比較すると次のようになります。

任意整理 個人再生
費用 4~10万円 40~60万円
期間 約3ヶ月 7~8ヶ月

任意整理は1件あたり4万円程度で済むこともありますが、個人再生は総額50万円かかる場合があります。

また、裁判所を通すことから解決までの期間も長く半年以上は必要なので、すぐに債務整理を行いたい方は早めに依頼することが大切です。

費用や期間はどれくらい?個人再生の基礎知識

個人再生は費用が高く、解決までの期間も比較的長いです。必要書類の準備にも時間がかかるので、個人再生を行う前にチェックしておきましょう。

個人再生にかかる費用

個人再生にかかる費用は、以下のようになります。

収入印紙代 1万円
官報掲載費用 1万2000円
郵便切手代 1600円
個人再生委員への報酬 25万円
弁護士費用(司法書士費用) 30~50万円(20~30万円)

個人再生の費用は、すべて合わせると40〜60万円程度になることが多いです。費用の大半が弁護士や司法書士への報酬になるため、実績がありコスパのいい事務所に依頼するのがおすすめです。

解決までの期間

個人再生は解決するまでに7〜8ヶ月かかります。最初に必要書類を準備し申し立てを行うまでに1〜2ヶ月程度の期間が必要で、その後裁判所から認可されるまで約6ヶ月かかります。

3ヶ月程度で解決する任意整理や過払い金請求と比べて倍以上の時間が必要なので、その期間は貯金をするなど有効活用しましょう。

手続きから解決までの流れ

個人再生は、次のような流れで行います。

STEP
弁護士や司法書士との契約後、個人再生の申し立て

依頼人の収支や財産を調査し書類を作成した後、個人再生の申し立てを行う。

STEP
個人再生手続き開始決定

依頼人・弁護士・個人再生委員で3者面談を行い、個人再生を行う必要があれば決定される。

STEP
再生計画案の提出

弁護士とともに返済プランを計画し、再生計画案を裁判所に提出する。

STEP
再生計画案を認可

裁判所が返済の見込みがあると判断した場合認可する。小規模個人再生はこの前に書面による決議を行う。

STEP
再生計画に基づいて返済開始

再生計画が認可した約1ヶ月後に返済を開始する。

返済できるかどうかがポイント!個人再生ができる条件

引用元:みつ葉グループより
CHECK
  1. これまでに毎月安定した収入があること
  2. 再生計画案の通りに返済できること
  3. 借金総額が5000万円以下であること

これは、個人再生の種類に関係なく、利用するために必須となる条件なのでチェックしておきましょう。

このほか、種類ごとの条件は次のようになります。

小規模個人再生 債権者から2分の1以上の反対がないこと
給与所得者等再生 過去7年以内に、以下の決定を受けていないこと
・個人再生手続のハードシップ免責許可決定
・給与所得者再生の再生計画認可決定
・破産手続免責決定

個人再生は会社や家族にバレる?知られるのはどんなとき?

個人再生は基本的には会社や家族にバレることはありません。しかし、以下のような場合はバレる可能性が高いので注意が必要です。

会社にバレるケース

  • 退職金見込額証明書の発行理由を説明するとき
  • 会社に借金があり債権者に通知が送られたとき

家族にバレるケース

  • 同居人の収入証明書や家計表の提出の際に理由を聞かれたとき
  • 連帯保証人の妻に一括請求通知が送られたとき

個人再生を行うときは必要な書類が多くあるため、証明書などの発行理由を聞かれたときにバレてしまう可能性が高いです。

また、会社に借金があったり妻を連帯保証人にしたりしていると、受任通知や一括請求通知が送られてしまうので、確実にバレてしまいます。

成功率が下がる!個人再生でやってはいけないこと

個人再生の成功率は90%以上ですが、書類の不備や裁判所の不認可などで失敗することもあります。また、認可後も再生計画通りに返済できないと、認可を取り消されてしまいます。

依頼前に個人再生でやってはいけないことを確認し、確実に成功させられるように準備しておきましょう。

弁護士や裁判所に虚偽の報告をする

書類準備の段階で弁護士や裁判所に虚偽の報告を行うのは絶対にやめましょう。虚偽がわかった段階で、不認可はもちろん罰則を受ける可能性もあります。

弁護士に収支や財産の状況を報告するときも正確に伝えなければいけません。証明書類と照らし合わせた際に事実と異なれば、当然裁判所への申し立てはできなくなります。

再生計画案の提出期限を守らない

再生計画案の提出期限は必ず守りましょう。個人再生は必要書類が多く手間がかかりますが、早めに準備を行い提出期限内に提出しなければいけません。

期限を過ぎてしまうと、手続きが打ち切られたり申し立て書類が受理されなかったりするため、個人再生の失敗につながります。

提出する書類は弁護士や司法書士に任せきりにせず、自分で準備するようにしましょう。

認可後に返済をストップしてしまう

認可後に返済をストップしてしまうと、個人再生が取り消されることがあります。個人再生では、認可前に再生計画案に沿って支払う金額を積み立てる履行テストが行われます。

6ヶ月間行われる履行テストで毎月積み立てができなかった場合は、不認可になる可能性が高いので注意しましょう。

特定の借入先に優先的に返済する

複数の借入先がある場合は、必ずすべての借入先に返済を行いましょう。個人再生には債権者平等の原則と呼ばれるルールがあり、カード会社・銀行・個人すべての債権者に平等に借金を返済するという決まりになっています。

特定の借入先に優先的に返済してしまった場合は否認対象行為とみなされ、返済額が高くなる可能性があるので気を付けましょう。

月々の支払いはいくらになる?個人再生の体験談を紹介

個人再生をするメリットやデメリットを詳しく知りたい方は体験談をチェックするのがおすすめです。さまざまな理由から個人再生を選択した3つのケースを紹介するので、どの債務整理方法を選ぶか迷っている方は必見です。

FXの投資による借金を20%減額できた例

名前 田中裕一
性別
借金していた年齢 33歳
職業 会社員
住んでいる場所 埼玉県さいたま市
借金額 450万円
どこから借りたのか アコム、アイフル、レイク、JCB、セゾン、その他多数
借金の理由 FXなど投資資金

経緯

少額から簡単に始められる、とのフレコミで、FX口座開設から転落が始まりました。
大きくプラスの月もあれば、かなりひどくマイナスする月もあり、1年後にはプラス20万円となるも、カード会社からの借り入れが300万円に膨れ上がり…。
初めてキャッシングしてから3年、借金額450万円。妻と相談した結果債務整理を選択しました。

結果

持家を手放したくない、自己破産はなんとか避けたい、との思いより、個人再生への道を選択しました。
裁判所へ申し立て手続きを行い、カード会社からの請求も止まり、借金額を20%程度へ減額でき、3年間の返済計画で進めることになりました。
今回の債務整理により家族に多大な迷惑と苦労をかけ、「二度と借金はしない!」と心に誓い、日々仕事に打ち込み、相談に乗っていただいた弁護士に感謝する毎日です。

今回の例のようなFXの投資は借金額が多く、自己破産が認定されない場合も多いので投資による借金は個人再生がおすすめです。

借金が増えてつらい気持ちで毎日を過ごさないよう早めに専門家に相談することで、現実的な返済プランを立てることができます。

借金総額を260万円から100万円に減額できた例

名前 木村弘樹
性別
借金していた年齢 36歳
職業 会社員
住んでいる場所 千葉県野田市
借金額 260万円
どこから借りたのか アコム、武富士、アイフル、プロミス、ニコス
借金の理由 ギャンブル・浪費

経緯

元々生活費や遊ぶ金に困るとすぐにATMでお金を借りる生活だったのですが、会社をリストラされてからほかの業者からも借り入れるようになり、借金額が急速に増えたため当然毎月の返済額も増えました。
少しでも返済が遅れれば怖そうな雰囲気の男性から電話が掛かってくることが理由でノイローゼ気味になり、弁護士事務に相談に行くことにしました。

結果

すぐに受任通知が送られ、その日から催促の電話がかかってこなくなりました。
弁護士さんに相談に行くまでは業者の主張するわたしの借金総額は260万円でしたが、引き直し計算をしていただいた結果、借金は160万円に満たないということがわかりました。
そしてさらに再生手続きをすれば、わたしの総債務額は100万円ということになり、これを3年間分割で支払えばよいということになったのです。
再就職していましたので、返済は全く問題ありませんでした。
毎月毎月決められた額をきちんと振り込みし、3年かけて完全に返済が終了しました。

今回の例のように自分では自己破産だと思っていても、弁護士に相談をしてみると別の方法を提案されることがあります。

自己破産よりも個人再生のほうが条件がゆるいので、問題のありそうな借金の原因でも一度弁護士に相談をしてみましょう。

あっさりと問題が解決することも珍しくありません。

月々の返済額を減額できた例

名前 田中一郎
性別
借金していた年齢 45歳~48歳
職業 会社員
住んでいる場所 兵庫県姫路市
借金額 480万円
どこから借りたのか オリックスクレジット、UFJニコス、ライフ、姫路信用金庫、プロミス、モビット
借金の理由 両親の入院費及び治療費

経緯

母親の生活費や入院費のためにモビットで150万円の借り入れを行いました。
自転車操業の最中、今度は親父が交通事故で入院したことで、借金はさらに増えてしまいました。
そんなとき、弁護士事務所のチラシを見て相談することを決意しました。

結果

弁護士には自己破産をすすめられたものの、家を残したかったため個人再生を選びました。
毎月の収支報告に返済金をプールした銀行通帳のコピーを提出し続け、1年後やっと裁判所を納得させることができました。
おかげで、借金は1/5に圧縮され月々の返済合計は5万円となりました。
現在はこれを3ヶ月ごとに債権者に振り込んでおり、あとあと数ヶ月で完済できることになりました。

この例ではギリギリ個人再生を行うことができましたが、あとちょっと遅れていたら、自己破産しかできなかったかもしれません。

借金で苦しんでいるのであれば、手遅れになる前に弁護士に相談をするのが一番です。

借金が多すぎて支払いに苦しんでいるなら個人再生の検討を

個人再生は、任意整理に比べて利用条件は厳しいものの、多額の借金を大幅に減らすことができる制度です。

自己破産よりも車や家を手元に残すことができるため、財産を手放したくない方におすすめです。

しかし、個人再生にはいくつかのデメリットもあります。事前にデメリットや利用できる条件を理解し、自分に合う債務整理方法を検討しましょう。

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